副代表 鈴木俊也先生からのメッセージ

安城市交響楽団
副代表 鈴木俊也

コロナ禍によるコンサート自粛の嵐が吹き荒れて、春もどこかに吹き飛んでしまいました。
ひとたび日常生活に危機が及んだ時、真っ先に切り捨てられるのが音楽の宿命だということを、あらためて痛感しています。
私も以前から計画していた自主企画のコンサートを何とか行えないものかと、観客全員分のマスクや消毒液を手配したり空気清浄機を購入したり入場方法や鑑賞方法を工夫したりと、考え付く限りの対応策を用意しましたが、チケットを入手されたお客さんから「行き帰りの交通機関が怖いから諦めます。」などと言われ、泣く泣く中止せざるを得なくなりました。
日常生活から「衣・食・住」のひとつでも欠けたら、とても音楽などに目を向けていられるものではありません。
迫りくる危機が大きければ大きいほど、音楽は無力です。
しかし、東日本大震災の後、多くの音楽家が被災地に駆けつけ、音楽のことなど考える余裕すらなかった被災者の方々の前で演奏しました。
疲れ切って、希望を失って、生きる気力すらなくしていた方々に、笑顔と希望と勇気を与えたのも、また音楽だったのです。
「怒髪天」という私の好きなバンドの歌に「喰うために働いて 生きるために唄え!」という曲があります。
「衣・食・住を得ることは絶対に必要だが、人として生きるためには音楽が欠かせない」とでもいう意味でしょうか。
本当に辛いときや苦しいとき、音楽に救われたという経験を持ってみえる方も多いのではないかと思います。
音楽にはそれほどの力があるということです。
でも、そういう音楽を届けられる力(技)を持った人は決して多くありません。
皆さんは人を励まし、勇気づけ、笑顔にする音楽の力を持った、数少ない貴重な方々なのです。
今は確かに苦しいです。
収入の道を絶たれたり、必要なことをやりたくてもやれなかったり、先の出口がまったく見えない方も多くみえるでしょう。
でもこの機会だからこそ、いざ音楽が必要とされたときにそれに応えて笑顔や勇気や希望を与えられる音楽が演奏できるよう、力を蓄え準備していくときだと思います。
私も今、次の自主企画コンサートに向けて何曲も編曲をしています。
いつもだと忙しい日常の合間を縫うようにして行っている編曲作業ですが、今は1曲1曲にじっくり取り組むことができています。
こうしたら喜んでもらえるだろうか、それともこうしたほうが・・・などと、お客さんの笑顔を想像しながら何度も何度も推敲を重ねています。
まだ出口は見えませんが、いつか必ず出口はやってきます。
そのときのために、今できることを精一杯やっていきましょう。
そして、コロナで疲れ切った人たちに、笑顔と希望を届けましょう。
皆さんにはそれができる力があるのです。